第1部危うき奔流(2)いでよ「真の投資家」(日本人とおカネ)
2007/12/09, 日本経済新聞 朝刊
 愛知県安城市に住む会社員、香村篤史(36)は十月七日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ証券取引所にいた。民族衣装をまとった現地の投資家に、どのような株を持っているかを聞いて回り、証券会社に乗り込んで口座を開設。ラマダン(断食月)の最中で食べるものに苦労しながらも不動産や格安航空など五銘柄を購入し帰国した。これで保有する外国株は二十五種類。運用状況は「幸い好調」という。
■初心者が痛手
 日本人の金融資産の五割を占める現金と預金は元本保証のノーリスク運用だ。これに対し、外国株は株価と為替変動の影響を受けるハイリスク商品。投資の初心者が、対極にある運用手段の境界を軽々と飛び越える。外国株の達人に見える香村も五年前まで資金はすべて銀行預金だった。
 しかし、運用の初心者がハイリスクな世界で成功するのはまれだ。
 ニューヨーク市場で原油高が加速した十月十九日未明、三日ぶりにパソコンを立ち上げた兼子孝夫(仮名、名古屋市、50)は顔色を失った。千二百万円に増えたはずの外国為替証拠金取引(FX)の証拠金が三百万円に減少していた。対ドルで一一七円前後だった円相場は三日間で一一三円台に急騰。利益で車を買おうと決めた直後の悪夢だった。
 「利益は少なく損失は重く感じる」。二〇〇二年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授はこんな投資家心理を指摘した。投資に不慣れな人は値上がりするとすぐ売却し売買を繰り返す。
 興味深いデータがある。仮に東証一部の全銘柄を一九八九年のバブル経済絶頂期に買い、昨年まで十七年間保有したうえで売却したとする。この間の日経平均株価の下落率は五割。ところが驚くべきことに最初に株を買ったおカネは約一六%増えた計算になる(日本証券経済研究所の試算)。配当や、無償で持ち株を増やす株式分割などが下落分を補うためだ。
 長期にわたり、個別銘柄に分散して投資すればリスクは薄まる。長期の株式投資はバブル崩壊という経済環境の激変さえも耐えられることを示している。
 関東地方に住む四十代の会社員は毎月十万円程度の資金でこの七年間、様々な株を買い続けた。つぎ込んだ資金は千万円に満たないが、今では二千万円程度の資産になった。この投資手法を提唱している名古屋市の投資顧問会社代表、井上雅文(58)は「短期の値動きに惑わされると九九%失敗する」と強調。金額を決めて定期的に投資をする「ドルコスト平均法」という手法に分散投資を織り交ぜることで、値動きのリスクは低減できるという。
■洞察力を問う
 「うちのお客さんのほとんどがネット投機家。『貯蓄から投資へ』の流れが定着するのはいつのことか」。あるインターネット専業証券の首脳は、個人を株式市場に呼び寄せた自負がある一方で不安も抱えている。
 投機家――。禅から生まれたこの言葉は本来、師弟の心が激しくぶつかり、通い合うさまを表す。それがいつしか相場の値動きを当てる短期売買を指すようになった。日本では一獲千金を追うような投機家を遠巻きにみる風潮もある。
 投機自体は悪ではない。一九九二年の英ポンド危機。ヘッジファンドを率いるジョージ・ソロスは英中央銀行と激しくぶつかり、打ち負かした。経済学の泰斗ケインズは投機家の顔も併せ持ち、財をなした。共通するのは、国家や株式会社に対する深い洞察力と分析力。視線の先は遠く、長い。同じ投機家でも目先に一喜一憂する日本のネット投機家とはまったく違う。
 目先の投機家ばかりでは成熟した市場は成り立たない。企業業績を見向きもせず、値動きを頼りに株式の短期売買を繰り返す日本のデイトレーダー。企業価値や国家の消長を見極める力を備え、腰を据えて売買する「真の投資家」が育ったとき、市場は輝きを増す。(敬称略)



昨日の日経新聞1面からですが、記事の最後のあたり。何と言うのか。
こういう斜め上目線の記事や主張って何とも空虚に感じるんですよね。

誰しも何が目的で株取引をしてるかと言えば、優待が欲しいとか企業の事業報告書が欲しいとか
経済の勉強のためとか、まあ色々あるとは思いますが、基本的に大多数の人は儲けたいと思ってやってるわけで。インサイダーなど違法性を伴うものに抵触しなければ、短期であるか長期であるか、投資判断で重視する手法がPERやPEGレシオであるか移動平均線からの乖離率であるかなどはただの儲けたいという目的に向うまでの手法の違いに過ぎないと思うんですよね。

目動きを追う投機家の存在があってこそ市場は売買高も膨らみ、厚みを増してくるわけですし。
誰だって損したくありませんから、自分の手法が失敗すれば、誰でも勝手に自分で研究するようになるでしょう。
倒産株のマネーゲームで失敗して大損した投機家を長期バリュー派の投資家が笑うのは当然ですし
銘柄選択を間違えたり、リスク管理のなってない長期投資は時に短期投資以上にリスクに晒されるのも又常識でしょう。
ただの儲ける為の手法の違いに過ぎないのに、 投機自体は悪ではないなどと言いながら必要以上に投機と言われるものにシニカルな目線を向けてばかりいるこういう類の記事を見るとなんかうんざりという気がします。

それと、自分は別に目先に一喜一憂する頭空っぽのネット投機家と呼ばれようが何だろうが別に構いやしませんし
否定もしませんが、それでトレーダーをひとまとめにするのは無理があるという想像力が普通は働きそうなものですが。
>同じ投機家でも目先に一喜一憂する日本のネット投機家とはまったく違う。
こういう何でもかんでも一まとめにするような適当な記事揚げてるようでは程度が知れてしまうと思うんですけどね。
個人投資家全員に竹田和平さんにでもなれとでも日経は言いたいのでしょうか?


http://moneyzine.jp/article/detail/10615?p=1
近年、外国企業が「日本で上場したくない」と言う理由
こちらの記事より

 証券界も日本の市場の活性化のために外国に出掛けては東証上場の勧誘に努めているのだが、その担当者が外国企業から浴びせられた言葉。それがもの凄くショッキングな一言だった。

「なぜ東証のようなローカル市場にわが社が上場しなければならないの。他にもシンガポールや香港、そのうち上海など規制が緩やかでしかも活気のある市場があるのだから、何も東証など行かなくてもいいのではないか」

と言われたのだそうだ。

 サブプライムショックでも明らかになったように、日本の市場の現状は極めて異常だし、外圧に弱い。東証そのものは日本の市場なのだが、取引きの6割以上は外国投資家であり、生殺与奪の権は外国勢の手のなか。金融資産は個人だけでも1550兆円もあるのに株式関連の資産は投信も含めてたったの12%しか市場に入ってこない。

国内の投資家すら見放しているような市場が、外国人の目に魅力的なものとして映るはずもあるまい。一国の経済力の強さは市場の規模によって決まるといっても過言ではない。かつては世界の市場の約4割をしめていた東証のシェアは、その後バブル崩壊などによって下がり続け、いまや世界のシェアの9%しかない。

少子高齢化社会が避けられない日本の国力を増強するためには、市場の活性化が何としても必要なのだが、証券税制を巡る議論を見ても、将来を見据えた議論など全く見られず、相変わらず金持ち優遇は怪しからんとなる。ローカル市場と呼ばれるわけである。


幸いカネはどこにでもいけるのだから、真剣にカネを出稼ぎに出すことを考える時だろう。日本のカネが日本を見捨てる日も近い。


今の日本市場から投機家が消えたら出来高が極少になってしまう銘柄もたくさん出てくるでしょうし
ますます外国人投資家の意のままに翻弄されるんじゃないですかね。
パチンコから株投資へ移行してくる人達。こういう人達こそ大歓迎で市場は迎えるべきだと思いますが。
証券税制をめぐる金持ち優遇はけしからんという近視眼的な意見の浅はかさと
投機はダメだ。投資をするべきだとヒステリックに叫ぶ声に感じる違和感には何か相通じるものがあるような気がします。

追記 こんな記事とかも

http://blog.zai.ne.jp/terasaka/2007/12/post_b61d.html
寺坂淳の少数意見 長期投資を疑う

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